「地震も地球の活動のひとつ」ジオパークを通した災害との向き合い方

「地震も地球の活動のひとつ」
ジオパークを通した災害との向き合い方
2016-07-05 阿蘇ジオパーク 山内万里子
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時々ジオパークって何?と聞かれることがありますが、私は「地球の営み、自然の循環を間直に見る事ができ、地球との暮らし方を考えるきっかけとなる場所」と考えています。普段見慣れている風景は、長い年月をかけて動いている地球の活動とその大地に住む人たちが、大地の動きに向き合って築き上げてきた姿。地球は、私たちに大きな恵みも与えてくれますが、今回の地震のように痛ましい災害を引き起こす事もあります。災害を防ぐ事は簡単ではないですが、地球の活動のしくみや大地の特徴を知り、自分の身を守る生活の工夫をすることで、災害を減らす事(減災)ができると思います。

ジオパークにはジオサイトと呼ばれる「ジオパークの見どころ」があり、阿蘇ジオパークでは阿蘇中岳を中心に山や草原、峡谷や水源、温泉などがジオサイトに指定されています。阿蘇のジオサイトは、全て火山とのつながりがある場所で、目の前に広がる自然の造形などを材料に、その成り立ちやしくみを楽しく学んで、大地を活用し、持続可能な地域社会づくりを進めています。ジオパークをうまく活用して、みんなで地域の未来を考える事が大切だと思います。

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本震があったときは深夜だったこともあり自宅で寝ていました。前震とは違い、揺れが長く続き、食器棚が倒れ、お皿などが割れる音で目が覚めました。床に物が散乱する中、やっとのこと外に出て、近所の方々と一緒に車の中に避難しました。地鳴りのような音も聞こえ、いつ終わるのかわからない恐怖感が朝方まで続きました。

ジオパークの事務所は元々阿蘇山上の阿蘇火山博物館内にありましたが、地震直後は博物館までの道路が崩れ、通行できない状況でした。その後、応急で道路の片側だけ通れるようになり、時間を限定して山頂の関係者だけで確認に登りました。建物内は棚や物がほぼ倒れていて、そこにいたら命がなかったのではないかと想像すると怖いです。登山道もとても危険な状況だったのでもし昼間に発生していたら観光客の方々にも大きな影響が出ていたのではないかと思います。

その後、数回に分けて事務所の片付けを進め、建物内からパソコンや資料などを運び出しました。地震直後は、阿蘇地域振興デザインセンターに場所を借りて再開し、現在は、再び事務所を移動し、役犬原の旧役犬原小学校で活動しています。

地震直後は、本来の日常業務はほとんどできず、SNSを活用した情報発信を中心に動きました。しかし、地震に不慣れなこともあり、情報収集やその情報をどこまで発信すればよいのか戸惑いもありました。阿蘇ジオパークは阿蘇地域8市町村からなる広域の活動で各地域の情報を届ける必要があるのですが、各市町村によって被害状況もバラバラです。ある特定の情報で、阿蘇地域全体が危ないというイメージを与える事もあり、被害が少ない地域に風評被害が出てしまう懸念もあります。しかし、地球の活動のひとつとして、阿蘇地域の歴史のひとつとして、現状を伝えていきたく、伝え方を工夫しながら情報発信を続けています。

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今後のジオパークとしては、震災から立ち上がる阿蘇の姿を見せていきたいと考えています。今回の地震を伝えていく為、ガイドさんの研修を進める予定です。顧問の先生とともに地震の影響を受けた場所を回り、座学やフィールド研修を重ねます。地震の爪痕だけを見せるのではなく、長い年月をかけて動く地球の営みが理解できるようなストーリーづくりも課題です。

また、今回の地震や減災を学ぶ地域向けセミナーなども進めていきたいと考えています。ジオパークネットワークには、調査研究に関わる方々が沢山いますので、そうした方々と連携し、地域の方々が安心して暮らせるジオパーク活動ができればいいなと思います。

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海外の方からは、噴火も含み、なぜ危険性があるこの地域に住むの?といった事を聞かれたりもします。実際に今回の地震では、警報が鳴り続け、避難生活が続き、道も通れない状況に遭遇し私自身も同じように思うことはありました。ですが、自然の脅威に面しながらも、自然からいただく恵みや、震災に向き合って再建に向けて頑張る地域の方々をみるとたくさんの元気や勇気をもらいます。自然と生きるたくましい方々がたくさんいらっしゃいます。そうしたところをひっくるめて阿蘇はやっぱりいいなと思います。

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山内万里子
熊本県長洲町出身。大学卒業後イギリスに留学し現地の企業に就職。帰国後福岡の企業を経由し阿蘇へ。阿蘇ではNPO法人ASO田園空間を経て、現在は阿蘇ジオパークの事務局を務める。

阿蘇ジオパーク推進協議会

郵便番号 869-2221
住所 熊本県阿蘇市役犬原805番地
電話番号 0967-34-2089
FAX 0967-34-2090
e-mail info@aso-geopark.jp
website http://www.aso-geopark.jp/
facebook https://www.facebook.com/AsoGeopark/
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インタビュー・テキスト:三上和仁 撮影:甲斐弘人
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