本震の時はものすごい揺れで、気づいた時には寝ていたベッドと違うベッドにいました。揺れの影響で飛んでいたんです。家は一部が立っているだけでほぼ潰れ、2階に寝ていた家族はかろうじて残っていた階段から降りました。1階で寝ていたばあちゃんはガレキの中から救出しました。こたつとベッドの間にいたので潰れずに助けることができたんです。家は全壊で、もう住める状況ではなくなりました。
家族を車に避難させ、私は消防団に入っているので、地元の消防団と見回りを行い、その中で3人の救助活動を行いました。奇跡的に助かった方もいたのですが、一人は圧迫が強く亡くなられました。
そうした状況の中で、明け方くらいでしょうか「どうやら阿蘇大橋が落ちたらしい」と耳にしたんです。停電はしてましたし、携帯もつながらないので正確な情報もわからず、そんなはずはなかろうと最初は思っていたんです。
お店にはじめて来たのは4月18日の午後です。通常なら歩いても30分位で着く場所に住んでいるのですが、場所によって震災の影響が凄まじく、普段より時間がかかりました。それで店に着き付近を見渡すと、目の前の阿蘇大橋が本当に落ちていて、それを見た時はしばらく何も考えられませんでした。
※右手前がお店、左奥が崩落した阿蘇大橋
店に入ると、店内はめちゃくちゃで、裏の壁は全部剥がれました。開かなくなった扉もあります。その後、消防団の活動も続けながら片付けを少しずつ進めて、今にいたります。
※現在の店内の様子
再開はしたいなと思っています。
南阿蘇村で育ち、両親も南阿蘇村出身です。家も店の近くですし、ここが地元なんです。あらためて考えてみると、地元で商売をすることにやりがいを感じていて、それが大事だなと思ったんです。仕事をするなら、いろんなつながりがあり、地域への想いもあるので、ここでやれたら一番ですね。
ただ、やれるかはわからないんです。
店の下の方に田んぼがあってそこには地震の影響でできた地割れもあるんですが、以前より確実にこちらの方に伸びているんですね。こうした場所ですので、住んでいいのかもはっきりとはわかりません。阿蘇大橋の今後についてもまだわからないんですよね、新しく掘ろうとしているトンネルについてもそうです。東海大学も2年間は校舎を変えるわけですから、そうした動きも見ていく必要があります。
※崩落した阿蘇大橋
働いてみないかという話もありますし、村の方では調査の段階のようですが東日本大震災の被災地にあるような仮店舗を作る計画もあるようで、そうした話もあがってはきています。先日は福島から指導員の方が来て補助金の説明もありました。
そうした情報が今後も出てくると思うんです。
そこに課題を感じていて、事業によっても違うし、被災の度合いによっても状況は変わってくる。的確なアドバイスがもらえるような仕組み、各々にあった選択ができるようになればベストだと思うんです。個人で勉強をしても限度がありますし、行政の方も現在はパンパンですから、みんなが把握できるように何とかして欲しいなと思っています。
なかなか難しいと思いますが、道についても例えば10年かかるならかかると言ってもらえれば判断ができるんです。でも今はそうしたこともわかりません。車の流れも見なければなりませんから、10年なのか1年なのか、そうした情報がないと判断がつかないんです。
ここが大丈夫なら直したいのですが、そうではない場合のビジョンだけは持っています。どっちにいったとしても大変な事には変わらないのですが、情報を見極めて、やりがいがある方に行こうと考えています。
今回の震災はポジティブに捉えれば、1回フラットになったということでもあると思うんです。震災が起きる前から色々と悩みはありましたが、そうしたものを見つめなおすきっかけになり、またゼロから出発できるんです。なんでもできるし、やりたいことができるタイミングでもあります。
まるでんの方はお話した通り未定の状態ですが、私はもう一つ「アウトドアクラブ南阿蘇knot(ノット)」というチームで活動しています。knotは阿蘇周辺で点々と活動していたアウトドアガイドの集まりで、例えば近くのペンションとタイアップもしてました。宿泊客の皆さんを食事が終わった後に烏帽子岳をナイトハイクしてもらい、月や星を見てもらう、そうしたモデルを作っていたんです。少しずつ口コミも増えて、今年もそろそろ行こうかといった時に震災がありました。
そのknotの方は7月にツリーイングのイベントをやる予定です。イベントはまもなく公開しますが、そのツリーイングを通して全国的にも知り合いができました。教えてくれる先生も来てくれたり、沢山の方から応援してもらっています。他にも、被災地ツアーというわけではないですが、南外輪は安全な場所が多いので、そうしたところを歩いて、綺麗な場所をみてもらったり、場所によっては地震の爪あとも紹介したいと思っています。そうした事は地元のガイドだからできることだと思いますし、地域の盛り上がりにも、また自分たちの生活にもつながると考えています。
本当に今回の震災は色んな物を見つめなおすきっかけになりました。震災がありゼロになり、フラットにもなりました。でも、フラットになった以上はそこから上がるしかありません。もう一度スタートラインに立ち、仲間と一緒にゼロからスタートができる。そう考えて少しずつ前を向いてやっていきたいと思います。